※生成AIの利用ルールは会社ごとに異なります。この記事は特定の運用を推奨・否定するものではありません。実際の判断は、必ずご自身の勤務先の規定に従ってください。
会社のPCでは、そもそも開けない
会社のPCでClaudeを開こうとして、ブロック画面が出た——そんな経験、ありませんか。
生成AIの業務利用は原則NG。会社のPCからは、そもそもサイトにアクセスできない。情シスからの通達に書いてあるのは「業務での生成AI利用は禁止」の一文だけ。
この時点で、たいていの人はこう思います。「じゃあ、自分には関係ない話だな」と。
でも環境は変えられなくても、仕事のやり方は変えられます。ルールは1ミリも破らずに、です。
やることは単純で、「禁止」と書かれているものの中身を分解して、線の内側でできることを見つけるだけです。
「禁止」の3つの層
ひとことで「生成AI禁止」と言っても、実際には性質のちがう3つの話が混ざっています。
| 層 | 禁止されている内容 | 性質 |
|---|---|---|
| 第1層 | 会社の情報を外部サービスに入れること | ほぼ全社共通。生成AI以前からある大原則 |
| 第2層 | 会社の端末・回線から利用すること | 技術的にブロック済み。会社の管理として当然 |
| 第3層 | 業務に生成AIを使うという行為そのもの | 会社によって解釈が分かれる領域 |
第1層は、生成AIの話ですらありません。顧客名や社外秘の数字を外部に出さないというのは、もともと守るべき情報管理の基本です。第2層も、会社の資産である端末の管理方針なので、当然のこと。
問題は第3層です。多くの通達は「業務での生成AI利用を禁止する」としか書いていません。では、自分の個人端末で、会社の情報をひとつも入れずに、仕事の段取りそのものを磨くことまで禁止されているのか。ここは会社によって考え方が本当に違います。
だからこそ、まずやるべきは自社の規定を読むことです。「たぶんダメだろう」で止まっている人がとても多いのですが、実際に読んでみると、禁じられているのが第1層と第2層だけだった、というケースは珍しくありません。
「第1層がダメだから、全部ダメ」と拡大解釈して、自分の手を止めてしまう。 これが一番もったいないパターンです。
一方通行の原則——情報は出さない、型は持ち込む
線引きの考え方は、覚えてしまえばシンプルです。外へ出すものと、中へ持ち込むものを、はっきり分ける。それだけです。
会社から外へ、絶対に出さないもの。
- 案件名、顧客名、取引先名
- 個人情報
- 社外秘の数字(売上、原価、見積金額)
- 未公開の計画や契約内容
- 社内資料のファイルそのもの
外から会社へ、持ち込んでいいもの。
- 段取りの型、作業の手順
- テンプレートやフォーマット
- チェックリスト、確認すべき観点
- そして、自分の頭に入ったスキル
情報は外に出さない。成果物と知識だけを中に持ち込む。この一方通行さえ守れていれば、それは抜け道でもグレーゾーンでもなく、単に情報管理を守りながら自分の腕を磨いているだけです。
ルールの内側でできること
では具体的に何ができるのか。ラボ長が実際にやっていることを、5つに整理しました。
型とテンプレートを、個人環境で作る
いちばん効くのがこれです。WBS、議事録、課題管理表——PMが繰り返し作るものには、必ず「型」があります。その型を個人環境のClaudeで作り込んで、会社では型に沿って手を動かすだけにする。
WBSを実際に作らせた手順はこちらの記事でくわしく書いています。案件の中身を渡さなくても、汎用的な骨組みは十分に作れます。
型はファイルに保存してClaudeのプロジェクトに覚えさせておくと、次からは一発で同じ品質のものが出てきます。その設定方法は記事1を参照してください。
頭の整理と、抜け漏れのチェック
「この案件、何か見落としている気がする」という感覚を、言語化してもらう使い方です。リスクの芽を洗い出す方法は記事にまとめています。
ただし、ここは注意が必要です。実際の議事録をそのまま渡すのは第1層に触れます。案件名を伏せ、固有名詞を落として、状況の要点だけを渡す——この一手間を必ず挟んでください。
資料の「作り方」を身につける
進捗報告やステークホルダー向けの説明資料は、中身よりも構成で決まります。どういう順番で、何を先に見せるか。その組み立て方をClaudeと練習しておけば、会社では中身を埋めるだけで済みます。
具体的な作り方は進捗報告とスライドの記事と、口頭説明を10分で資料にした記事にまとめています。
定型コミュニケーションの型を持つ
会議の通知メール、日程調整、リマインド。毎回ゼロから書いている文面こそ、型にする価値があります。メールとカレンダー招待をまとめて作らせた記事が参考になるはずです。
自分専用のツールを、自分で作る
そして、この問題に対するいちばん強い答えがこれです。外部のAIサービスに情報を送らずに動くツールを、自分で用意してしまう。
議事録ツールを1時間で作った記事で紹介したものは、ブラウザだけで動いてどこにも通信しません。会社の情報を扱っても、外に出ていかない構造です。
殴り書きを撮るだけで議事録にするアプリも、同じ発想から生まれました。既存のサービスが使えないなら、使える形のものを作ればいい。コードが書けなくても、日本語で頼むだけで形になります。
会社PCへの橋渡し
個人環境で作ったものを、どうやって会社に持ち込むか。ラボ長がよく使うのはGoogleスプレッドシート経由の受け渡しです。
Claudeに型やテンプレートをスプレッドシートへ書き出させておけば、会社のPCからはブラウザで開くだけ。ファイルを持ち歩く必要も、メールに添付する必要もありません。あとは会社側で、実際の案件名や数字を埋めていきます。
外に出したのは「空の型」だけで、中身は一度も外に出ていない。 この形が作れると、日々の運用がぐっと楽になります。
もちろん、外部のクラウドサービスの利用可否も会社ごとにルールがあります。ここも必ず規定を確認してください。
業務で使うときの注意
便利だからこそ、次の3つは必ず守ってください。
⚠️ 規定を推測で判断しない。 「たぶんダメ」も「たぶん大丈夫」も危険です。実際の文面を自分の目で読んでください。
⚠️ 迷ったら情シスや上長に確認する。 黙って進めるのが一番よくありません。聞いた事実が残っていること自体が、自分を守ります。
⚠️ 「バレなければいい」は絶対にやらない。 一度の違反で積み上げた信用は消えます。守るのはルールではなく、自分のキャリアです。
ルールは守る。でも、できることまで諦めない。 これがラボ長のスタンスです。
解禁の日への備え
いまの「原則禁止」は、おそらく永久には続きません。法人向けの契約形態が整い、社内に専用の環境を用意する企業も増えています。ルールは、少しずつ現実に追いついてきています。
そのとき何が起きるか。「明日から使っていいですよ」と言われて、すぐ動けるかどうかで差がつきます。
ツールが使えるようになることと、ツールを使いこなせることは別の話です。禁止されている今は、準備期間だと考えてみてください。型を持っている人と、その日から触りはじめる人とでは、スタート地点がまるで違います。
まとめ
- 「生成AI禁止」には3つの層がある。全部をひとまとめに諦める必要はない
- 絶対に守るのは第1層——会社の情報を外部に出さないこと
- 線引きは一方通行。情報は出さない、型と知識は持ち込む
- 型づくり、頭の整理、資料の組み立て、自分専用ツール——ルールの内側でできることは多い
- 迷ったら推測せず、規定を読む。それでも迷うなら情シスに聞く
- 禁止されている今は、解禁の日に向けた準備期間

「うちは禁止だから」で止まってた時期が、いちばんもったいなかったなと思う。禁止されてるのは会社の情報を外に出すことであって、PMとしての段取りを磨くことじゃないんだよね。線さえちゃんと引ければ、できることは思ってるより全然ある。まずは自分の会社の規定を、一度ちゃんと読むところから始めてみて。


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